法律

「ノンフィクション「逆転」事件(最高裁平成6.2.8)」をわかりやすく解説。

事件の概要

昭和39年、米国統治下の沖縄でXは米兵と殴り合いの喧嘩をし、

傷害致死罪で起訴、懲役3年の実刑判決を受けた。

その後、上京し、都バス運転手として、平穏な日々を送っていた。

そんな中、Yは「逆転」を執筆、ノンフィクション賞を受賞。

「逆転」の中で、Xは実名を公表される。

Xは慰謝料請求訴訟を提起。

1審、2審ともにXの請求認容。

Yが上告。

判決の概要

上告棄却

  • 有罪判決を受け、服役したという事実は、その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であるから、みだりに前科等にかかわる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有する。
  • 服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、前科等にかかわる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益を有する。
  • 前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、実名使用の意義及び必要性を併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。

事件・判決のポイント

  • 憲法の人権規定が間接適用されているのが、ポイントです。
  • 表現の自由とプライバシー権(前科を公表されない利益)の比較衡量がされています。

関連条文

民法

第709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

第710条(財産以外の損害の賠償)

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

裁判所ホームページ(外部リンク)

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