法律

「前科照会事件(最高裁昭和56.4.14)」をわかりやすく解説。

事件の概要

XはA会社に雇用されていたが、解雇されたところ、

A会社を相手取り、地位保全の仮処分を申請した。

A会社側の弁護士が会社の依頼により京都市伏見区役所に対して、

Xの前科照会を行なったところ、Xに前科があることが判明。

(Xは道路交通法違反、業務上過失傷害、暴行等の前科あり)

よってA会社はXを経歴詐称のため解雇した。

Xは、自己の前科を回答したことは違法として、京都市に対して損害賠償を求めて出訴。

1審はXの請求棄却。

2審はXの請求を一部認容。

京都市が上告。

判決の概要

上告棄却

  • 前科及び犯罪経歴は人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。
  • 本件のように、漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたると解するのが相当である。

事件・判決のポイント

  • 前科や犯罪経歴についてはプライバシーの度合いが高い反面、内容によっては公共性の高いものにもなり得ます弁護士会だからと言って、漫然と回答した点が、敗訴理由の一つと言えるでしょう。

関連条文

国家賠償法第1条

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。


弁護士法第23条の2(報告の請求)

弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

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