法律

「強制採尿(最高裁昭和55.10.23)」をわかりやすく解説

事件の概要

Xは覚せい剤譲渡の疑いで逮捕された。

Xは覚せい剤自己使用罪の嫌疑が持たれ、

警察より尿の任意提出を求められたが、これを拒否。

警察は、覚せい剤自己使用罪の証拠収集に、

身体検査令状と鑑定処分許可状に基づき、

医師による強制採尿を実施。

尿に覚せい剤を含有する鑑定書を取得。

Xは覚せい剤譲渡罪、覚せい剤自己使用罪で起訴。

1審、2審はX有罪。

X上告。(強制採尿は違法なため、鑑定書に証拠能力がないと主張)

判決の概要

上告棄却

  • 強制採尿は、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許される。
  • ただし、実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべき。
  • 体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状が必要。

事件・判決のポイント

  • 強制採尿は最終手段。
  • 強制採尿をする際は、体の安全と人権への配慮が必要。
  • 捜索差押許可状が必要。
  • 捜索差押許可状には医学的に相当である方法により実施される旨の記載が必要。

関連条文

刑事訴訟法第99条 

裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。

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