法律

「用途地域の指定(最高裁昭和57.4.22)」をわかりやすく解説

事件の概要

Xは岩手県紫波郡で精神病院を経営し、将来病院施設の拡張を予定していた。

岩手県知事Yは、都市計画法8条1項に基づき、X所有の土地を含む地区を工業地域に指定すること等を内容とする盛岡広域都市計画用途地域の決定をした。

Xは、

  • 本決定は手続上の瑕疵(公聴会が開催されていないなど)
  • Yが恣意的な裁量により本地区を工業地域に指定した

として、主位的に決定の無効確認、予備的に取消しを求めて出訴。

1審、2審は不適法とした。

(理由は、工業地域の指定は、直接特定の個人に向けられた具体的な行政処分にあたらない。)

X上告

判決の概要

上告棄却

  • 都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法八条一項一号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない
  • なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解される。

事件・判決のポイント

建築主は、建築確認拒否処分に対する取消訴訟で、用途地域指定が違法であることを主張することができるということです。

用途地域指定の時点で違法性を主張してもダメ、ということですが、実際は、違法建築として却下されることがわかっているものの申請はしないので、実態と離れているとの批判も多い判決です。

(用途地域指定の時点で争いを認めるべきとの意見が多いです。)

関連条文

都市計画法第八条(地域地区)

都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。一〜十六略

行政事件訴訟法第三条(抗告訴訟)

この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3〜7略

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