捜索は無条件に認められてはいない
徴税吏員の捜索について今一度、考えてみます。
捜索の根拠は、国税徴収法第百四十二条にあります。
国税徴収法第百四十二条(捜索の権限及び方法)
1 徴収職員は、滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。
この条文を根拠に、捜索を実施します。
そして、この条文についてですが、これは無条件に捜索を認めているわけではありません。
問題は「捜索の仕方」
当然、滞納整理をする際の最終的な手段として、捜索は必要です。
滞納者の財産は、最終的には家の中に隠している場合があるからです。
その財産を見つけ、滞納整理をすることは、大事なことです。
問題なのは、「捜索の仕方」です。
強引な捜索は憲法違反の可能性も
家の中を捜索する場合、個人のプライバシー侵害の度合いは極めて強いものになります。
なので、あまりに強引な捜索は控えるべきですし、強引な捜索は場合によっては、不法行為にすらなりうることもあります。
捜索自体、家の中に入り、プライバシーを侵害するとはいえ、最大限配慮をした上での捜索であれば、問題ないと思われます。
しかしながら、実務で行われている、かなり強引な捜索は、とても危険です。
・本人不在で、鍵屋に鍵を開けてもらい、捜索開始する。
などは、立会人の元とはいえ、やはりすべきではありません。
こういった捜索は、国税徴収法上は、一見適法行為に見えますが、憲法の要請を満たしていない可能性が出てきます。
憲法では、「住居の不可侵」や「幸福追求権」が保障されています。
憲法では、「納税の義務」も謳われていますが、憲法は基本的には国民から国家に対するメッセージです。
「納税の義務」の条文は例外的なものと読み取れます。
なので、憲法の要請である「納税の義務」を果たさせるために、ハードな捜索も大丈夫、と考えるのは間違っているのです。
国家権力から人権を守る方が、憲法のメッセージとしては重要だからです。
徴税吏員の「捜索」について話を戻すと、「捜索」の「仕方」が重要です。
あまりにハードな捜索は、考え直す必要があります。
滞納者といえど、地域住民であることを思い出す必要があるかもしれません。
無理矢理着ぐるみ剥ぎ取るという手が仕方ない場合もあるのですが、
より良き納税者になってもらうように手を尽くす努力も必要になるかと思います。