強制採尿とは?
強制採尿とは?
刑事事件で被疑者が、警察等により強制的に尿を取られることです。
例えば、薬物事件で被疑者が採尿を拒否した場合、医師が尿道にカテーテルを通して、採尿することなどがあります。
尿は老廃物であり、いずれ体外に排出されるものなので、血液と異なり、体の一部としての性格は弱まります。
強制採尿には、捜索差押許可状が必要とされています。(※強制採血には、鑑定処分許可状と身体検査令状が必要)
昭和55年決定
ちなみに、強制採尿に関して、「昭和55年決定」と言われる最高裁の判断があります。
(詳しくは、こちら「昭和55年決定」をご確認ください)
内容は以下の通りです。
「昭和55年決定」 被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適切な代替手段の不存在等に照らし、犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合には、このような方法(カテーテルの使用)での強制採尿も許される |
→「犯罪捜査にやむをえない場合には、最終手段として行われることは許される。ただ、実施の際に身体の安全など十分、配慮すべき。」
おしっこを取られることでも、無茶な捜査は、ダメだということです。
あくまで、被疑者であるので、体の安全面や権利侵害をしないようにしながら、適切な手続きのもと、おしっこを取るように、ということです。
備忘録
「強制採尿」→「捜索差押許可状が必要」を覚えておかなければなりません。
「強制採血」→「鑑定処分許可状と身体検査令状が必要」とセットで覚えておくといいでしょう。
覚え方としては、
- 尿は老廃物であり「物」としての性格を強めているので、覚せい剤の押収と同じ「捜索差押許可状」が必要
- 血液は「物」とはみれず、身体の一部と考えるべきなので、「鑑定(専門家の判断)処分許可状」と「身体検査令状」が必要
のように整理しておくのが良いかと思います。
参考条文
刑事訴訟法第二百十八条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
② 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
③ 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。
④ 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
⑤ 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
⑥ 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。