条文
第五百九条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
わかりやすく
次にあげる債務の債務者は、債権者に対して相殺を主張することはできない。
ただし、債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、相殺の主張ができる。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命や身体の侵害による損害賠償の債務
解説
例えば、債務者Aが債権者Bに対して
500万円の債務を負っていて、AがB
に700万円貸していたとします。
債務者Aは債権者Bに対して、通常は
500万円の相殺を主張することがで
き、A「残り200万円を返してくれた
らいいわ」となります。
しかし、ここでの500万円が「不法行
為・生命身体の侵害による損害賠償」
の債務であった場合、相殺はできない
ということです。
なぜかといえば、「相殺」というのは、
お互いに同種の目的を有する債務(主に
金銭債務)を負っている場合に、どちら
かが「相殺」の意思表示をすることで、
各々の債務が同額で消滅するという制度
だからです。
ちなみに、「ただし〜」以降は、債権者
Bが「不法行為・生命身体の侵害による
損害賠償(500万円)」を譲り受けたと
きは、同種の債務となるため、相殺の主
張ができる、ということになります。