コラム

行政の財政難問題に終止符!自治体には"自由に使える"お金がない?!

行政の財政難問題

現役財務官僚が「国家財政は破綻する」とした論文を発表し、波紋が広がっています。

論文の真偽や評価については、別に譲るとして、地方公共団体においても、

この財政問題は度々取り沙汰されています。

「お金がない」「○○市は破綻する?」「財政再建団体へ〜」と言った論調は、

もはや他人事ではなく、どこの自治体でも起きている事象と言えるでしょう。

自治体には「お金はある?!」

実際のところ、問題の本質はどうなのでしょうか?

問題の本質は、「お金がない」ことではないのです。

実際、自治体に「お金はある!」のです。

どういうことか?

行政は、予算の民主的な統制の必要性から「現金主義」「単年度会計制度」が採られています。

しかしながらこの「単年度会計制度」では、自治体の財布の実態はわかりません。

それもそのはず、たった1年間の財布の動きしか見ていないからです。

そこで参考になるのが、地方公会計制度で用いられるバランスシートになります。

このバランスシートは、企業では普通に使われており、企業の経営状況を見るときには、必須のものと言えます。

ここでは、具体例として、国内で唯一の財政再建団体である北海道の夕張市を取り上げて説明したいと思います。

夕張市のバランスシートは、以下の通りになります。


【資産の部】
503億円
 【負債の部】
305億円

 【純資産】
198億円

資産503億円に対して、負債305億円となっています。

・・・んっ?

どういうことでしょう?

企業で言うところの破綻というのは、負債が資産を超過した時に起こります。

ということは、実際、国内で最も財政が厳しいと言われている夕張市でさえ、破綻はあり得ないのです。

自治体に、自由に使えるお金がない現実

では、なぜこれほどまでに全国多くの自治体が財政問題で悩んでいるのでしょうか?

それは、結論から言えば「自由に使えるお金がない」からなのです。

お金の自由度を示す指標の一つに「経常収支比率」というものがあります。

「経常収支比率」というのは、家計に例えるとエンゲル係数です。

エンゲル係数が高くなればなるほど家計は圧迫されます。

この「経常収支比率」、前述夕張市で言うと126.3と恐ろしく高い数字になっています。

以下に、全国の経常収支比率のランキングのリンクを貼り付けておきます。

全国1700ある自治体のうち1000以上の自治体で経常収支比率は90を超えています。

単年度で物事を考える行政にとって、単年度の経常収支比率がこれだけ高いことは問題です。

単年度で収支を見るため「お金がなく」見えるのです。

本当は、「自由に使えるお金がない」というのが実情です。

資産はあるので、公共施設を売却したり、基金を取り崩したりすれば、

お金ははっきり言って「いくらでも」あります。

経常収支比率のあまりの高さから「自由に使えるお金がない」だけなのですが、

それを「お金がない」ものと錯覚してしまっているのが、

今の行財政の担当者であり、それを報道するマスコミであり、その報道をみる住民でもあるのです。

財政難問題を好転させるために

現実、そういった議論がなされている中、財政難問題を解決するには、どうしたら良いのでしょうか?

これはもう「経常収支比率を下げる」しか方法がありません。

経常収支比率を圧迫している

  • 建設事業を見直す
  • 扶助費の抑制をする
  • 人件費を抑える

などをしていかなくては、自由に使えるお金は生み出せませんし、

新たな施策を打つことはできません。

過去から積み上がってきた、過剰なまでの住民サービスと膨れ上がった組織体制を見直さない限り、

この「お金がない」問題は解決ができないのです。

バランスシートをきちんと見て、正しい認識を多くの住民が持つことが、本当は大事なことですが、

そういった住民がマジョリティになることは、現実なかなか難しいと思います。

なので、行政が優先して取り組むべきは、単年度会計思考が改まらない限りは、

「経常収支比率を下げる」ように努力するのが、最善の方法と言えるでしょう。

愛知県豊田市は経常収支比率は70を切っています。

企業による税収の影響が大きいのですが、行財政運営からすると見習うべき点が多々あるのではないでしょうか?

こういった優良な財政運営をする自治体を見習いながら、経常収支比率を下げる努力をすることが、

クリエイティブな施策のための財源につながるのではないでしょうか?

おまけ

行財政の問題について、本質的な理解が進む書籍として、「国民のための経済と財政の基礎知識(高橋洋一)」がおすすめです。

本書では元財務官僚であり、内閣官房参与でもあった高橋洋一氏(現在は大学教授、作家、YouTubeでも活躍)が「経済と財政」について、本質をわかりやすく解説しています。

マスコミやインターネットから次々と溢れる情報をどう考えればいいか、教えてくれる良書です。

日本経済の問題点について、さらに詳しく知りたいと思った方には、「日本人のための経済原論(小室直樹)」がおすすめです。

こちらはかなり分厚い本になりますが、書かれている内容は、非常にわかりやすいです。

経済の本質と日本人が知っておくべき日本経済の問題点について、難解な事象をとてもわかりやすく書かれています。

在野の天才、小室直樹氏の素晴らしい仕事の一つでもあります。

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