法律

国税徴収法第141条〜147条をわかりやすく解説〜徴収吏員の捜索〜

条文

第百四十一条(質問及び検査)

徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、又はその者の財産に関する帳簿若しくは書類を検査することができる。

一 滞納者

二 滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者

三 滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者

四 滞納者が株主又は出資者である法人

第百四十二条(捜索の権限及び方法)

1 徴収職員は、滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。

2 徴収職員は、滞納処分のため必要がある場合には、次の各号の一に該当するときに限り、第三者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。

一 滞納者の財産を所持する第三者がその引渡をしないとき。

二 滞納者の親族その他の特殊関係者が滞納者の財産を所持すると認めるに足りる相当の理由がある場合において、その引渡をしないとき。

3 徴収職員は、前二項の捜索に際し必要があるときは、滞納者若しくは第三者に戸若しくは金庫その他の容器の類を開かせ、又は自らこれらを開くため必要な処分をすることができる。

第百四十三条(捜索の時間制限)

1 捜索は、日没後から日出前まではすることができない。ただし、日没前に着手した捜索は、日没後まで継続することができる。

2 旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入することができる場所については、滞納処分の執行のためやむを得ない必要があると認めるに足りる相当の理由があるときは、前項本文の規定にかかわらず、日没後でも、公開した時間内は、捜索することができる。

第百四十四条(捜索の立会人) 

徴収職員は、捜索をするときは、その捜索を受ける滞納者若しくは第三者又はその同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものを立ち会わせなければならない。

この場合において、これらの者が不在であるとき、又は立会に応じないときは、成年に達した者二人以上又は市町村の吏員若しくは警察官を立ち会わせなければならない。

第百四十五条(出入禁止)

徴収職員は、捜索、差押又は差押財産の搬出をする場合において、これらの処分の執行のため支障があると認められるときは、これらの処分をする間は、次に掲げる者を除き、その場所に出入することを禁止することができる。

一 滞納者

二 差押に係る財産を保管する第三者及び第百四十二条第二項(第三者に対する捜索)の規定により捜索を受けた第三者

三 前二号に掲げる者の同居の親族四 滞納者の国税に関する申告、申請その他の事項につき滞納者を代理する権限を有する者

第百四十六条(捜索調書の作成)

1 徴収職員は、捜索したときは、捜索調書を作成しなければならない。

2 徴収職員は、捜索調書を作成した場合には、その謄本を捜索を受けた滞納者又は第三者及びこれらの者以外の立会人があるときはその立会人に交付しなければならない。

3 前二項の規定は、第五十四条(差押調書)の規定により差押調書を作成する場合には、適用しない。この場合においては、差押調書の謄本を前項の第三者及び立会人に交付しなければならない。

第百四十七条(身分証明書の呈示等)

1 徴収職員は、この款の規定により質問、検査又は捜索をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

2 この款の規定による質問、検査又は捜索の権限は、犯罪捜索のために認められたものと解してはならない。

わかりやすく

第百四十一条(質問及び検査)

徴収職員は、必要があるときは、滞納者に対して質問し、財産に関する帳簿や書類を検査することができる。

第百四十二条(捜索の権限及び方法)

徴収職員は、必要があるときは、滞納者の物や住居を捜索することができる。

第百四十三条(捜索の時間制限)

捜索は、基本的には日中にしなければならない。

第百四十四条(捜索の立会人) 

徴収職員は、捜索をするときは、立会人が必要。

第百四十五条(出入禁止)

捜索、差押の最中は、滞納者以外は、出入禁止することができる。

第百四十六条(捜索調書の作成)

徴収職員は、捜索したときは、捜索調書を作成しなければならない。

第百四十七条(身分証明書の呈示等)

徴収職員は、質問、検査又は捜索をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、呈示しなければならない。

質問、検査又は捜索の権限は、犯罪捜索のために認められたものと理解してはいけない。

ということになります。

解説

個人的には142条の徴収吏員の捜索権限の部分が気になります。

「徴収職員は、滞納者の物又は住居を捜索することができる。」

とは言え、無条件に捜索して良いというものではありません。

本条文にも「必要があるとき」との文言も入っていますし、

基本的には、住居侵入に際しては、憲法の要請である令状主義が妥当すると思われるからです。

当然、悪徳な滞納処分に対しては、厳しい姿勢で対応しなければなりませんが、

任意徴収の可能性が少しでもあれば、捜索というプライバシー侵害の度合いの強い行為は控えるべきです。

住居侵入を伴う捜索は、本当にプライバシー侵害の度合いが強いです。

「納税の義務」が憲法第30条で規定されている一方、

「住居の不可侵」が憲法第35条で規定されており、

さらに「プライバシー権」は憲法で最も大事とも言われる13条で規定されています。

必要性の高くない捜索だけでなく捜索そのもののあり方に関して、今一度立ち止まって、考えてみる必要があるように感じます。

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