総計予算主義の弊害
自治体経営が上手くいかない理由の一つに「会計制度」があります。
国内の多くの自治体では、いまだに「単式簿記」が用いられ、「複式簿記」が用いられることは、ほとんどありません。
これは、総計予算主義という行政の原則のせいでもあります。
総計予算主義とは、「一会計年度の収入と支出は、全て予算にあげなければならない」という立場のことです。
この総計予算主義という考え方があるため、いつまで経っても「単式簿記」で思考をしてしますのです。
形骸化する複式簿記
このような現状を踏まえ、総務省は、地方公共団体において、「複式簿記」の作成を要請しました。(統一的な基準による財務書類の作成及び固定資産台帳の整備)
平成 29 年度末までに、ほぼ全ての地方公共団体において、整備は完了しています。
しかしながら、実態はというと、「複式簿記」導入によって、財政運営が好転している自治体はほとんどありません。
というのも、この総務省からの要請、書類作成や台帳整理をするだけのものだからです。
この「複式簿記」的な資料を、誰も見ないホームページにアップし、それで良しとしているのです。
結果、議会は、「単式簿記」で議論していますし、自治体内部の政策立案も「単式簿記」での議論が中心です。
自治体の思考は、「単式簿記」のままなのです。
経済を合理化する精神が必要
この「単式簿記」の何が最も問題かというと、社会の仕組みと逆行しているところが最大の問題です。
資本主義は、「単式簿記」ではなく「複式簿記」で考えます。
結局、自治体の経営は、本質的には、江戸時代から何も変わっていないのです。
以下に、資本主義について、引用します。
「(中略)じゃあ、資本主義は何か」
「じゃあ、タイムマシンなんかで昔の社会にぱっと行った。資本主義かどうかを見分ける最も簡単な方法は何か」
「簿記を調べればいい。複式簿記になっていれば、それは資本主義であり、大福帳(単式簿記)になっていれば、それは資本主義ではない。いわゆる経済を合理化するっていう精神が最も表れているのが複式簿記である。」
小室直樹の世界〜社会科学の復興をめざして〜(編著:橋爪大三郎)
自治体経営が「大福帳(単式簿記)」である以上、経営が合理化できないのは当然のことです。
「経済を合理化するっていう精神」が自治体経営にはないので、借金をどれだけ増やしても、危機感を持ちません。
破綻するまで、わからないのかもしれません。
現在の行政サービスを持続して供給するためには、健全な財政運営が必ず必要になってきます。
そろそろ、江戸時代的経営思考から脱却するべきです。