昨今、公共施設の老朽化問題は全国的にも注目をされています。
その公共施設の老朽化問題に対して、一つの対応策として、指定管理者制度の導入があります。
指定管理者制度とは、公の施設の管理を民間に委託できる制度のことです。
指定管理者には、公の施設の管理について指定管理料という委託料が自治体から支払われます。
指定管理料については、施設ごとに異なり、0円のものから億を超えるものまで、様々です。
そこで、指定管理者が満足する指定管理料をもらっているかと言うと、それも施設ごとに異なり、中には「頑張っているのに、年々安くされる」といった声も聞かれます。
ここでは、指定管理者がどうすれば指定管理料を増額することができるのかについて、指定管理の事務を担当し、実際に担当者として、指定管理料の増額に結びつけた経験を活かして、有益な情報を記載したいと思います。
①指定管理料を増額したい理由の正当化・明確化
まず必要になってくるのが、「指定管理料を増額したい理由の正当化・明確化」です。
指定管理料を増額したい気持ちは誰にでもありますが、それが果たして「正当」なのか、また増額したい金額は「明確」か、そのあたりをハッキリさせておくべきです。
「正当化・明確化」については、
- 外的要因で収入が減り、その分、人件費削減などの経営努力をしているが、それでも赤字幅が広がるので、公共施設を健全に保つためにも、これだけの増額が必要
- 施設の細かな修繕の積み上げが年間○○円(過去三年平均)になるため、その分の増額が必要。使わなかった修繕料については返金する
などの理由から考えてみてください。
観光系の施設であれば、「どれだけ地域に貢献するために、いくらの人件費が必要」だとか「何人観光客を呼んで、いくらの経済効果を出すので、指定管理料を増額して、こういった観光の仕事をしたい」などと言って説得することもできます。
施設の特性に合わせて、「指定管理料を増額したい理由」について、「その理由で住民は納得するか」という視点を持って、考えてみると、自ずと答えは出てきます。
②最も大切なのは担当者とのコミュニケーション
指定管理者が指定管理料を増額したいと考えた時に、最も大切になってくるのが、「担当者とのコミュニケーション」です。
はっきり言って、担当者は「あたり・ハズレ」が非常に大きく、そこは運に左右されてしまいます。
公務員という「頑張らなくても給料のもらえる人」の中で、実際に指定管理者の立場に立って頑張ってくれる人、というのはごく一部です。
そんなごく一部の「あたり」であれば、指定管理料の増額も容易になってきますが、問題は「ハズレ」だった場合です。
結論から言えば、「ハズレ」であっても、諦めず、粘り強く、指定管理者自身について理解してもらう、という姿勢が重要になってきます。
いずれにしても大切なのは「コミュニケーション」で、より相互理解を深めるためには、お互い顔を合わせて、課題の共有をすることが重要です。
頻繁に顔を合わせていれば、どんな些細なことでも、情報共有できるので、お互いに「思い違い」しなくて済みます。
公務員は「自分の思うようにならないと気を悪くする人」「自分の知らないところで物事が進むと気を悪くする人」が一定数存在します。
そういう人を含めて、味方を少しでも増やしておくことが、予算確保はじめ、有利に物事を運ぶためには必要です。
直感的に「合わないな、この人」という担当者であっても、意識してコミュニケーションを取っているといつかは良いことがある可能性が高いです。
③上層部または地元議員とのコミュニケーション
担当者や所管部署の職員は嫌がりますが、指定管理料の増額のために有効な手段の一つが「上層部または地元議員とのコミュニケーション」です。
実際、トップのツルの一声や地元議員の議会での質問などをきっかけとして、指定管理料の増額に結びつけるケースは多々あります。
順番としては、
- 担当者
- 担当課長
- 首長等の上層部
- 地元議員
の順番で、パートナーを探していきましょう。
実際のところ、相当優秀な担当者以外は、担当課長あたりで、理解を示してくれる人がいればラッキーです。
幸運にも理解者がいた場合であっても、役所は巨大な組織なので、意思決定がスムーズにいきません。
ストッパーと呼ばれる、プロジェクトの足を引っ張る存在が至る所に潜んでいます。
ストッパーに足を引っ張られないためにも、上手に「上層部または地元議員とのコミュニケーション」を取るべきです。
ここで、オススメできないやり方は、
- 上層部または地元議員に直接かけ込み、チクる
ことです。
これをしてしまうと、担当課との間に軋轢が生じてしまいます。
担当課との間を円滑にしながら、「上層部または地元議員」に理解してもらうには、
- イベントを企画して、招待するなど、まずは足を運んでもらう
- 現状を理解してもらい、相談をする
- 相談する際に、担当課に一定の理解を示す(担当課はこういった理由で進められないのは理解できるが、困っているなど)
「上層部または地元議員」も強権的な人ではなく、調整型の人を選んだほうがうまく事が進む確率は高くなります。
まとめ
ここで記載した3ステップを踏むことで、「指定管理者が指定管理料を増額」することは、かなり現実的になってきます。
役所の仕事や予算確保は年単位で行われます。
焦らず、じっくり、一つ一つ進めていくことが大切です。
ここに記載した3つのうち一とつも実践できていない指定管理者は、驚くほどたくさん存在しています。
一つでも、他とかなりの差がつきます。
3つ全て実践すると無敵と言ってもいいぐらいです。
騙されたと思って、実践に移してみてください。
来年には、指定管理料の増額が実現しているはずです。