事件の概要
株券の発行をしていないY1株式会社にて、
取締役Xは、大株主Y2より、Y2が所有する株式全て(16000株)
を譲渡され、株主台帳に記載された。
その後、株主総会にて、Y2が16000株を有するとの前提で、
取締役Xを解任するとの決議があった。
大株主Y2の言い分は、
- 株券発行前のため、株式譲渡は無効
とのこと。
Xは、Y1株式会社を相手に株主総会決議取消の訴えを提起。
1審、2審ともにXの請求棄却。
X上告。(①定足数の不足②非株主Y2の関与のため決議を取消すことを主張)
判決の概要
破棄差戻。
- 商法204条2項(現在の会社法128条2項)の法意を考えてみると、株式会社が株券を遅滞なく発行することを前提に、その発行が円滑、正確に行われるようにするために、株券発行前の株式譲渡の効力を否定すると解するべき。
- この前提を欠く場合についてまで、一律に株式譲渡の効力を否定することは、立法趣旨に反する。
- 今回のケースのような場合、株主は意思表示のみによって有効に株式を譲渡でき、会社は株券発行前であることを理由に効力の否定はできない。
事件・判決のポイント
そもそも、「株券の発行」をきちんとしていないのに、
それを理由に「効力がない」とするのは、おかしいということです。
関連条文
会社法第128条(株券発行会社の株式の譲渡)
株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。