コラム

日本遺産は「負の遺産」。地域をトンネルした税金の行き先とは?

国をあげた地域ブランディング

数年前に文化庁が「日本遺産」というプロジェクトを企画し、

文化財の観光的活用など地域ブランディングをする事業がありました。

これは、「世界遺産」の権威性やブランド力にあやかり、

国が認定する「日本遺産」を観光地域振興のきっかけにしようというものです。

「世界遺産」は建造物などの文化財が多いですが、「日本遺産」は

地域文化・伝統などのストーリーが認定されるというものになっています。

2020年現在で、国内の約100件が「日本遺産」として認定されています。

そして、認定された地域には3年で1億円近い交付金がもらえるのです。

国から送り込まれる「プロデューサー」

「日本遺産」に認定されると地域では日本遺産を推進する「協議会」をつくります。

この「協議会」は行政、観光業従事者、商工会関係者、教育文化財関係者などで構成されます。

これらのメンバーで、「日本遺産」を通して、地域を盛り上げようというのです。

問題は、この後で、この「協議会」に国から「プロデューサー」なるものが派遣されます。

これが何を隠そう「ペテン」なのです。

特にこれといった実績もない、地域の実態も知らない口の達者な

「プロデューサー」が日本遺産の協議会にあれこれと指示を出します。

国からの交付金の使い方を含めて、ああだこうだと口を出します。

そして、地域にもよるのですが、「認定された」「お金をもらっている」

という立場の「協議会」は比較的素直に「プロデューサー」の言うことを聞くのです。

そして、その「プロデューサー」の指示のもと、事業の一部を

「プロデューサー」の会社や関連する会社に委託をします。

とんでもない話です。

事業の審査をし、受託する

この「プロデューサー」さらなる問題があります。

というのも、日本遺産の認定される前、申請をする際に、

審査員として文化庁側に名を連ねています。

ということは、「プロデューサー」自らが審査をし、

その後、公費で派遣され、そこから業務を受託するというマッチポンプ

というか、めちゃくちゃなことが起きてしまっているのです。

地域のためというより、「プロデューサー」の生計のための事業が

「日本遺産」と言えるかもしれません。

これは文化庁の側が、完全に事業設計を誤ったことに原因があります。

しかし、それを指摘する地域はありませんし、日本遺産の事業自体が

知名度がないので、国民に知られることもありません。

チェック機能が働かない由々しき問題です。

地域に何を残したのか?

最終的に、プロデューサーが美味しい思いをしても、

地域が活性化し、持続する地域社会が実現すれば、

それで良いかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか?

平成27年に始まった「日本遺産」事業は、誰も知らないばかりか、

地域に多額の税金が投入されました。

そして、今のところ成果は出ていません。

この先、出てきそうな予感もありません。

誰も見ることのないウェブやマップ、あまりよく理解できない

デザインなんかが各地域に出来上がりました。

文化財の観光的活用、さらには持続性のある地域社会の実現とは

ほど遠い現状が、「日本遺産」の成果です。

今、各地を見てみると、変なロゴぐらいしか残っていないように見受けられます。

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