法律

「児童養護施設の事故と損害賠償責任(最高裁平成19.1.25)」をわかりやすく解説。

事件の概要

Xは、Y1県の児童養護施設に入所していた。

Xは、施設内で他児童から暴行を受け、負傷し、後遺障害を負った。

Xは、Y1県とY2(施設運営者)に損害賠償を請求した。

判決の概要

Y1県には、損害賠償責任がある。

Y2(施設運営者)は、損害賠償責任はない。

解説

児童養護施設に入る児童は、様々な事情があって、施設入所します。

例えば、保護者から虐待を受けている児童がいます。

そういったことがわかれば、国や地方公共団体の責任として児童を保護しなければなりません。

児童には「適切な養育を受ける権利」があるからです。

不適切な養育をする保護者から国や県は、児童を守らなければなりません。

こういった実態を前提にして、本判決を見ていきます。

最高裁では、県には損害賠償責任を認め、施設運営者には認めませんでした。

理由は以下のように言っています。

県の損害賠償責任については、

「入所後の施設における養護監護は本来都道府県が行うべき事務である。入所児童の養護監護は、都道府県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解するのが相当である。」

施設運営者の損害賠償責任については、

「国賠法1条1項は、公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わない。この趣旨からすると、県が同項での責任を負う場合には、施設職員だけでなく施設運営者も民法(709、715条)でいうところの損害賠償責任を負わない。」

施設運営者も、「委託」のような形で行政の業務をする以上、「公務員みたいなもの」と考えていいということになります。

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