部分社会の法理とは?
部分社会の法理とは?
一般市民社会とは別の自律的法規範をもつ社会ないし団体内部の紛争に関して、内部規律の問題にとどまる限り、原則、司法審査の対象外とする考え方のことです。
「部分社会」には、様々な団体が含まれ、内部問題に司法審査が及ぶか否かは、団体の目的・性質・機能・紛争の性質など個別具体的に検討し、決定すべきとされています。
原則は司法審査の対象外なのですが、一般市民法秩序と関係のある事柄については、司法審査は及ぶとされています。
部分社会の具体例
判例では、大学の単位認定、地方議会の懲罰、宗教団体内の寄付、政党の内部規律などでこの「部分社会の法理」が用いられてきました。
大学の単位認定
- 富山大学単位不認定事件(最判昭52.3.15)
- 富山大学の教官Aは大学から停止措置を受けるも授業を継続し、学生らに授業の合格判定をしたものの、学部長が単位認定をしなかった事案
- 大学は特殊な部分社会を形成しており、司法審査の対象外とした
地方議会の懲罰
- 岩沼市議員出席停止事件(最大判令和2.11.25)
- 「地方議会の出席停止の適否は、司法審査の対象となる」と判示され、60年ぶりの判例変更により「部分社会の法理」は完全に放棄されたと解されています
宗教団体内の寄付
- 板まんだら事件(最判昭56.4.7)
- 信者らが宗教法人を相手取り「板まんだら」が本物ではないとし、寄付の錯誤無効を主張した事案
- 法律上の争訟にあたらず司法審査の対象外とした