日本の里親委託率は異常に低い
まず、措置児童とは何か?というところですが、児童養護施設などに入所している児童や里親に委託されている児童のことを指します。
様々な理由により、家庭での養育が困難な児童は、児童相談所が「措置」をして、施設や里親に預けられます。
「措置」とは、分かりにくい言葉ですが、「児童相談所が施設や里親に預ける」ことです。
「措置児童」とは、「児童相談所から施設や里親に預けられた児童」と考えれば良いです。
大体大きく分けると、児童の「措置先」は「児童養護施設」か「里親」になります。
以下は、代表的な国の里親委託率を示したものです。
(出典:厚生労働省「社会的養育の推進に向けて」より抜粋)
各国の要保護児童に占める里親委託児童の割合のグラフです。
「要保護児童」とは、保護を必要とする児童のことを指します。
日本は国際標準でみると、異常なぐらい里親委託率が低いのです。
なぜ、こういった現状になるのかの考察は別記事に譲りたいと思いますが、これはとても大きな問題です。
何が問題なのでしょうか?
家庭養育が大原則
子どもには、家庭で養育される権利があります。
これは、児童福祉法でも明記されていますが、元々は子どもの権利条約によるものです。
子どもの権利条約前文
児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであること
児童福祉法
第三条の二 国及び地方公共団体は、児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならない。ただし、児童及びその保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他の状況を勘案し、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあつては児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合にあつては児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、必要な措置を講じなければならない。
児童福祉法や子どもの権利条約にあるように、子どもには家庭で養育される権利があります。
また、児童福祉法では、家庭において養育することが適当でない場合は、「できる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、必要な措置を講じなければならない」とあります。
「できる限り良好な家庭的環境」とは里親家庭が想定されます。もちろん安全安心な里親家庭です。
現状の児童養護施設は、良好な家庭的環境と言うのは難しいのではないか、というのが筆者の感想です。
児童養護施設は、大人数の子どもと子どもたちの世話をする大人数の大人で構成されています。
施設によって規模が異なりますが、例えば子ども30人に対して同数程度の職員がいたりします。
職員は、当然2交代や3交代で施設を管理運営します。
もちろん、仕事としての児童養護なので、プライベートは別にあります。
それはそれで仕方のないことなのですが、子どもからすると特定の大人との関係性を築くのが難しいシステムになっています。
職員も担当制で、担当が変わることもありますし、施設をやめていき関係が途絶えるなんて場合もあります。
とにかく、良好な家庭的環境というのは、やはり難しいのではないかと思います。
そのような環境で生活していくと子どもが特定の大人との愛着形成などに問題が出てきたりすることも考えられますが、ここではその問題は置いておきます。
子どもには、「良好な家庭的環境で養育される」権利があります。
権利があり、それが実現できない状況があれば、それは権利が侵害されていると言っても言い過ぎではありません。
そして、施設入所児童は権利が侵害されている状況に対して、声をあげることができません。
一例を挙げると、施設に入所する際、子どもには「権利ノート」と言われるものが配布されます。
「権利ノート」は子どもの権利について、簡易に書かれたものですが、このノートには、何か嫌なことや思い通りにならないことがあった時に、訴えるためのハガキがついています。
しかし、このハガキが提出されることは、年間数件しかないそうです。措置児童は国内に約3万人もいるのに、です。
話がだいぶ進みましたが、施設入所児童は権利が侵害されている状況にあるように感じます。
そして、権利を主張する仕組みが十分に整っていないのが現状です。
措置児童の権利に対する対応策については、別記事で提案をしていますので、そちらをご一読いただければ幸いです。